蒙古斑革命 山口小夜子×高木由利子

第4回 遺跡発掘もする舞台衣装デザイナー 田中洋介

Words From 山口小夜子

田中さんは私の仕事仲間でもありますが、優しさと愛をもって仕事を進めていく方です。まだ20代半ばの若いデザイナーですが、ほんとうに素晴らしい仕事をされます。創作においての感覚の素晴らしさはもちろん、それと同時に、創作に至るのに必要とされる細かい連絡事項の確認や、物事の解釈、人を動かす力など、衣装デザインに必要な総合力を併せ持っているのです。

舞台衣装をつくるのには、ふつうの創作よりもたくさんの人が関わります。服を制作する側のスタッフにも、生地や型紙、縫製などいろんな分野の方々が関わり、それを動かしていかなくてはいけません。また舞台であればさらに、演出家の意図を汲み、物語の内容に基づいて、舞台美術や照明と合わせ、俳優さんたちを活かし、なおかつそこで衣装がうるさくもならず舞台の世界を衣装で表現する、ということも要求されます。舞台の世界で衣装をつくるということは、単に服をデザインする以上の、複雑な人間関係の狭間で混乱を起こさずに物事を運び、制限された中で、最大限の効果をあげるための、総合的な能力が必要なのです。

田中さんは、自分でデザインし服を縫う一方で、全体のバランスにたえず目を配られます。小さな確認もおろそかにせず、瞬時瞬時に的確な判断をくだし、スムースに進行させる。それでいて、ピリピリせずに柔らかい雰囲気で現場を落ち着かせる。なおかつその中で自分の世界観を衣装の中できちんと表現する。これは単に努力だけではなかなかできない、一種の才能だと私は思います。

なによりも、そのスポンジのような吸収力と、先入観がないことには驚かされます。物事とはこうだから、と決めつける先入観が、いい意味で田中さんにはないのです。先入観がないということは、物事の本質がちゃんと見えていること。本質がわかっているから、これはルールにしかすぎない、ということもわかって、アレンジすることも、崩すこともできるのです。田中さんはそれが無意識のうちにできている。だから無理がない。これから様々な経験を積まれていく中で、その物事の本質に向かう素直で透明な部分はずっと持ち続けて欲しいと願っています。

インタビューを読む

The Salvage Project of 蒙古斑革命

2007年に他界したファッションモデル/パフォーマーの山口小夜子と写真家の高木由利子が2005年から2007年にかけて行っていたプロジェクト『蒙古斑革命』の失われていたWebサイトのサルベージを開始します。

『蒙古斑革命』は、ファッションモデルとしてかつて ”日本” のアイコンであった山口小夜子と世界を飛び廻り”人の存在”を撮り続ける高木由利子が、あらためて日本に生きる人々の美意識を探り、そのアイデンティティに向き合うべく、2人の目に留まった総勢32名の”エッジな人々”へインタビューを行ったプロジェクトです。

その様子は、 雑誌「ソトコト」で高木由利子による写真とグラフィックをメインにインタビューの抜粋を掲載し、Webサイトでインタビュー全文を公開するという形でおよそ2年間にわたり連載を行っていました。

連載が終了した2007年、山口小夜子が急逝。
そして、奇しくもそれとほぼ時を同じくし、サーバーダウンによりWebサイトの全データが消失、また、ローカルデータやインタビュー音声なども消失してしまい、『蒙古斑革命』の記録を閲覧することができなくなってしまいました。

山口小夜子急逝から10年経過した2017年、『蒙古斑革命』を当時愛読し、多くの影響を受けたという星野圭一の呼びかけに始まり、高木由利子、プロジェクト発足当時から影で支えていた現代美術家/ホーメイ歌手の山川冬樹、山口小夜子と舞・朗読・映像によるパフォーマンス活動を共にした演出家の生西康典、エンジニアの篠原敏蔵らが集まり、『蒙古斑革命』復活プロジェクトを発足。高木由利子が所蔵していたインタビューの様子を撮影した映像や誌面原稿から記録を起こし直し、新たに再構築することで『蒙古斑革命』Webサイトの復活にたどり着きました。(データサルベージ作業は、現在も続いており32名分のインタビューは順次公開していきます。)

第1回目の公開は、山口小夜子生誕の日にあたる9月19日。全32名へのインタビューを終え、連載の最後に行われた山口小夜子と高木由利子の「終わらない旅」と題された対談からスタートします。この対談は『蒙古斑革命』立ち上げの経緯やその想いを語った内容となっており、また、プロジェクトのステートメントとしても受け取ることができます。「終わらない旅」と題されているとおり、連載終了後も『蒙古斑革命』の精神が多くのひとに拡がっていくことを願った山口小夜子と高木由利子の意志を受け継ぐところからサルベージを開始します。

10年の時を経てふたたび『蒙古斑革命』が蘇ることで、山口小夜子と高木由利子の企みと想いが、現代の多くのひとと共鳴し「旅の続き」がはじまることを願っています。

2017年9月19日
「蒙古斑革命」復活プロジェクト 一同