蒙古斑革命 山口小夜子×高木由利子

第9回 力強いドラムとアンビエントな音世界で、異世界へと誘うアーティスト KUJUN

Words From 山口小夜子

音楽家であるKUJUNとは、私がパフォーマンスをするときにコラボレーションをしたり、DJとして同じイベントに出たり、クラブ・シーンやパフォーマンスの場で出会ってきました。KUJUNの音の世界では、力強いドラムとアンビエントな音世界という、まったく異なるように見える二つの世界が矛盾なく一つになっています。

彼のドラムは傍に近づくとはじかれるような力強さを持って、激しくパワフルに迫ってきます。一方、彼の作る曲は、水道管がカーンと鳴る音や、街のざわめき、あるいは雲を流し梢を揺らす空気までもが音として現れているようなアンビエントな世界。その場を音そのものに変化させ、音の力によって人を包み込み、聴く人を安堵させるのです。その音の感覚はどこから生まれてくるのだろうと常々不思議に思っていたのですが、今回お話を伺って、少しその秘密を覗けたような気がします。

身体に流れるネイティヴ・アメリカンの血は彼のドラム独特のビートやグルーヴとなり、子供の頃に耳を傾けていた街のざわめきが、異世界へと導いてくれるアンビエントな音世界へと繋がっている。そのアンビエントな音世界はまた、KUJUNそのものです。彼は言葉少なな方ですが、眼差しや佇まい、雰囲気が周りの人に安心感を与える。会うたびに、どうしてこんなに温かく、のびのびとしたオーラをまとうことが可能なんだろう、というくらい大きく優しい方なのです。

今回、彼のお母様からもお話を伺いましたが、そんな彼の佇まいや音の世界を見ていると、お母様からもらった愛を自分の子供や周囲の人々に全身で返し、なおかつそれを音に変換させて多くの人に届けているようにも思えるのです。

The Salvage Project of 蒙古斑革命

2007年に他界したファッションモデル/パフォーマーの山口小夜子と写真家の高木由利子が2005年から2007年にかけて行っていたプロジェクト『蒙古斑革命』の失われていたWebサイトのサルベージを開始します。

『蒙古斑革命』は、ファッションモデルとしてかつて ”日本” のアイコンであった山口小夜子と世界を飛び廻り”人の存在”を撮り続ける高木由利子が、あらためて日本に生きる人々の美意識を探り、そのアイデンティティに向き合うべく、2人の目に留まった総勢32名の”エッジな人々”へインタビューを行ったプロジェクトです。

その様子は、 雑誌「ソトコト」で高木由利子による写真とグラフィックをメインにインタビューの抜粋を掲載し、Webサイトでインタビュー全文を公開するという形でおよそ2年間にわたり連載を行っていました。

連載が終了した2007年、山口小夜子が急逝。
そして、奇しくもそれとほぼ時を同じくし、サーバーダウンによりWebサイトの全データが消失、また、ローカルデータやインタビュー音声なども消失してしまい、『蒙古斑革命』の記録を閲覧することができなくなってしまいました。

山口小夜子急逝から10年経過した2017年、『蒙古斑革命』を当時愛読し、多くの影響を受けたという星野圭一の呼びかけに始まり、高木由利子、プロジェクト発足当時から影で支えていた現代美術家/ホーメイ歌手の山川冬樹、山口小夜子と舞・朗読・映像によるパフォーマンス活動を共にした演出家の生西康典、エンジニアの篠原敏蔵らが集まり、『蒙古斑革命』復活プロジェクトを発足。高木由利子が所蔵していたインタビューの様子を撮影した映像や誌面原稿から記録を起こし直し、新たに再構築することで『蒙古斑革命』Webサイトの復活にたどり着きました。(データサルベージ作業は、現在も続いており32名分のインタビューは順次公開していきます。)

第1回目の公開は、山口小夜子生誕の日にあたる9月19日。全32名へのインタビューを終え、連載の最後に行われた山口小夜子と高木由利子の「終わらない旅」と題された対談からスタートします。この対談は『蒙古斑革命』立ち上げの経緯やその想いを語った内容となっており、また、プロジェクトのステートメントとしても受け取ることができます。「終わらない旅」と題されているとおり、連載終了後も『蒙古斑革命』の精神が多くのひとに拡がっていくことを願った山口小夜子と高木由利子の意志を受け継ぐところからサルベージを開始します。

10年の時を経てふたたび『蒙古斑革命』が蘇ることで、山口小夜子と高木由利子の企みと想いが、現代の多くのひとと共鳴し「旅の続き」がはじまることを願っています。

2017年9月19日
「蒙古斑革命」復活プロジェクト 一同