蒙古斑革命 山口小夜子×高木由利子

第12回 とても自然にドラァグクイーン
ヴィヴィアン佐藤

Words From 山口小夜子

ドラァグクィーンのきらびやかな装いのヴィヴィアンさんとは数多のパーティやイベントですれ違ってきましたが、軽妙なトークと圧倒的な存在感を披露しながら人をさっと受け入れてしまうような優しく柔らかな空気をいつも感じていました。私の友人は何かにつけて「あれほど優しくて心の温かい、人間的に素晴らしい人はいない」と言っていますが、その言葉の通りの方なのです。

装いを外した素顔のヴィヴィアンさんは謙虚で控えめなくらいに静かな方です。以前に私が映画出演のお手伝いをしたときに、ヴィヴィアンさんがサポート役についてくださったことがあったのですが、そのときの繊細な心遣いは特に印象的でした。ごくごく自然に、私が欲しいものをすっとさりげなく目の前に出してくれるのです。姿見が必要な場面では姿見を、喉が渇いたと思えばお水を。それも私が具体的に頭の中で形にする前に。それはもちろん、ご自身が見られる側に立たれているからこそできる配慮であったと思いますが、それ以上に自然ににじみ出てくる人に対する愛があるからではないかと思います。ほんとうにナチュラルに人に優しくできるその本質が、装うことで周りをハッピーにしてしまうパワーに変換されているように感じます。

今回お話を伺ってわかったのは、こうした装いがヴィヴィアンさんにとってとても自然なことなのだということ。「装うほど自分が裸になる感じがする」とお話の中にありましたが、装うことで自分の本質が顕わになるという視点はファッションの仕事をしている私にとっても、なるほどと頷けることでした。また、それは「建物を建てない建築家」であるアーティストの表現としても自然なことで、“ヴィヴィアン佐藤”さんそのものが自分の身体を通したある意味での“建築”なのです。ウィッグやドレスをまとったドラァグクィーンであることはもちろん、ウィンドウ・ディスプレイや内装、イラストレーション、映画評論やエッセイも書かれ、あるときはお店のママもしたり、まさに八面六臂の活動ぶりですが、それはすべて幹となる核から伸びた表現の枝葉であるのです。固まった思考をときほぐしてくれるマジックを日常の中に投げかけてくれる表現をこれからも楽しみにしています。

The Salvage Project of 蒙古斑革命

2007年に他界したファッションモデル/パフォーマーの山口小夜子と写真家の高木由利子が2005年から2007年にかけて行っていたプロジェクト『蒙古斑革命』の失われていたWebサイトのサルベージを開始します。

『蒙古斑革命』は、ファッションモデルとしてかつて ”日本” のアイコンであった山口小夜子と世界を飛び廻り”人の存在”を撮り続ける高木由利子が、あらためて日本に生きる人々の美意識を探り、そのアイデンティティに向き合うべく、2人の目に留まった総勢32名の”エッジな人々”へインタビューを行ったプロジェクトです。

その様子は、 雑誌「ソトコト」で高木由利子による写真とグラフィックをメインにインタビューの抜粋を掲載し、Webサイトでインタビュー全文を公開するという形でおよそ2年間にわたり連載を行っていました。

連載が終了した2007年、山口小夜子が急逝。
そして、奇しくもそれとほぼ時を同じくし、サーバーダウンによりWebサイトの全データが消失、また、ローカルデータやインタビュー音声なども消失してしまい、『蒙古斑革命』の記録を閲覧することができなくなってしまいました。

山口小夜子急逝から10年経過した2017年、『蒙古斑革命』を当時愛読し、多くの影響を受けたという星野圭一の呼びかけに始まり、高木由利子、プロジェクト発足当時から影で支えていた現代美術家/ホーメイ歌手の山川冬樹、山口小夜子と舞・朗読・映像によるパフォーマンス活動を共にした演出家の生西康典、エンジニアの篠原敏蔵らが集まり、『蒙古斑革命』復活プロジェクトを発足。高木由利子が所蔵していたインタビューの様子を撮影した映像や誌面原稿から記録を起こし直し、新たに再構築することで『蒙古斑革命』Webサイトの復活にたどり着きました。(データサルベージ作業は、現在も続いており32名分のインタビューは順次公開していきます。)

第1回目の公開は、山口小夜子生誕の日にあたる9月19日。全32名へのインタビューを終え、連載の最後に行われた山口小夜子と高木由利子の「終わらない旅」と題された対談からスタートします。この対談は『蒙古斑革命』立ち上げの経緯やその想いを語った内容となっており、また、プロジェクトのステートメントとしても受け取ることができます。「終わらない旅」と題されているとおり、連載終了後も『蒙古斑革命』の精神が多くのひとに拡がっていくことを願った山口小夜子と高木由利子の意志を受け継ぐところからサルベージを開始します。

10年の時を経てふたたび『蒙古斑革命』が蘇ることで、山口小夜子と高木由利子の企みと想いが、現代の多くのひとと共鳴し「旅の続き」がはじまることを願っています。

2017年9月19日
「蒙古斑革命」復活プロジェクト 一同