蒙古斑革命 山口小夜子×高木由利子

第6回 予感を与えてくれるファッションデザイナー 津村耕祐

Words From 山口小夜子

最初に津村さんの服に衝撃を受けたのは、デザイナーの友人と西麻布近辺を歩いていたときのことです。交差点にある店の「ショウ・津村」さんとは長年近い位置にいながら、その服やお名前を知ってから実際に会ってお話しするようになるまでに、長い時間がかかってしまいました。直接言葉を交わすようになったのは、じつはここ数年のことです。ウィンドウに、コンクリートのようなものを布地に吹き付けたジャケットが飾られていて、そのあまりにすばらしさに「この服、とてもカッコいいね」と口にしたら、「それ、津村くんの服だよ」と。この頃にデザインされた服は、後に『モーリの色彩空間 part5.小夜子展』という50体のマネキンに世界中のデザイナーが服を着せる展覧会に、提供していただきました。

その後、津村さんは『FINAL HOME』というブランドを立ち上げ、“都市生活者のためのサバイバル”というコンセプトを打ち出すのですが、それは、その頃ちょうど「衣服が紫外線をブロックしたり、いかに身体を守ってくれるか」ということについて考えていた私にとって、まさにこれ、とでもいうべきものでした。衣服というのは、自身を飾り、自分自身の象徴でもあり、そのときどきの社会事象や文化的流行までもが織り込まれるものです。そうしたデコラティヴな部分はファッションの一つの側面ではあるのだけれど、それだけではなく、暖をとったり、風を通したり、陽射しを防いだり、裸体を隠すことも含めて身体をプロテクトする機能が、やはり原点ではないか、と考え始めていたのです。そこに、服が家や部屋の代わりになったり、着ることが生きることに密接に結びつき、自分自身を守ることに繋がる、という『Final Home』が登場した。だから拍手をもって、津村さんの作品を迎えたのです。

非常に気になるデザイナーであった津村さんでしたが、遠くから姿を垣間見る時期がしばらく続きます。三宅一生さんのオフィスに行くと、ガラス越しの部屋で、とても真剣な厳しい表情をされて服づくりに取り組まれてた姿を覚えています。ようやく話をする機会が巡ってきたのは、2000年に入って、ある展示会でのパフォーマンスのために「ペットボトルを使ったドレスを使いたい」とお願いにあがってからのことでした。話せば話すほど、遠くから見ていたときの津村さんの厳しく真剣な表情の裏には、こんなにも面白い面があるのか、ということを発見していくことができました。そしてなによりものごとを大らかに捉えていらっしゃる。だからこそ、『FINAL HOME』を生み出す発想が生まれたのだと思います。

今、世界中で地球環境も含めて人間のあり方を巡る問題が噴出しています。その中にあって、人間が生きていくために、何が必要で、何が大切で、どういうことが無駄なくだらないことで、何がいちばん原点なのか、ということを、津村さんは衣服を通して提示されている。それも移ろいやすいファッションの世界に身を置きながら、10年以上も前からずっと。そうして貫き通してきたことが、今、大事なメッセージとして私たちのところに届いているのだと思います。

インタビューを読む

The Salvage Project of 蒙古斑革命

2007年に他界したファッションモデル/パフォーマーの山口小夜子と写真家の高木由利子が2005年から2007年にかけて行っていたプロジェクト『蒙古斑革命』の失われていたWebサイトのサルベージを開始します。

『蒙古斑革命』は、ファッションモデルとしてかつて ”日本” のアイコンであった山口小夜子と世界を飛び廻り”人の存在”を撮り続ける高木由利子が、あらためて日本に生きる人々の美意識を探り、そのアイデンティティに向き合うべく、2人の目に留まった総勢32名の”エッジな人々”へインタビューを行ったプロジェクトです。

その様子は、 雑誌「ソトコト」で高木由利子による写真とグラフィックをメインにインタビューの抜粋を掲載し、Webサイトでインタビュー全文を公開するという形でおよそ2年間にわたり連載を行っていました。

連載が終了した2007年、山口小夜子が急逝。
そして、奇しくもそれとほぼ時を同じくし、サーバーダウンによりWebサイトの全データが消失、また、ローカルデータやインタビュー音声なども消失してしまい、『蒙古斑革命』の記録を閲覧することができなくなってしまいました。

山口小夜子急逝から10年経過した2017年、『蒙古斑革命』を当時愛読し、多くの影響を受けたという星野圭一の呼びかけに始まり、高木由利子、プロジェクト発足当時から影で支えていた現代美術家/ホーメイ歌手の山川冬樹、山口小夜子と舞・朗読・映像によるパフォーマンス活動を共にした演出家の生西康典、エンジニアの篠原敏蔵らが集まり、『蒙古斑革命』復活プロジェクトを発足。高木由利子が所蔵していたインタビューの様子を撮影した映像や誌面原稿から記録を起こし直し、新たに再構築することで『蒙古斑革命』Webサイトの復活にたどり着きました。(データサルベージ作業は、現在も続いており32名分のインタビューは順次公開していきます。)

第1回目の公開は、山口小夜子生誕の日にあたる9月19日。全32名へのインタビューを終え、連載の最後に行われた山口小夜子と高木由利子の「終わらない旅」と題された対談からスタートします。この対談は『蒙古斑革命』立ち上げの経緯やその想いを語った内容となっており、また、プロジェクトのステートメントとしても受け取ることができます。「終わらない旅」と題されているとおり、連載終了後も『蒙古斑革命』の精神が多くのひとに拡がっていくことを願った山口小夜子と高木由利子の意志を受け継ぐところからサルベージを開始します。

10年の時を経てふたたび『蒙古斑革命』が蘇ることで、山口小夜子と高木由利子の企みと想いが、現代の多くのひとと共鳴し「旅の続き」がはじまることを願っています。

2017年9月19日
「蒙古斑革命」復活プロジェクト 一同