蒙古斑革命 山口小夜子×高木由利子

第7回 粋で洒落ていてアヴァンギャルド、半世紀を駆け抜けた映画監督 鈴木清順

Words From 山口小夜子

鈴木清順さんとは『チゴイネルワイゼン』が公開された直後に雑誌で対談したのが、直接お目にかかった最初のことでした。その後『ピストルオペラ』に出演させていただいたり、仕事をされる清順さんの後ろ姿をこれまで拝見できたことは幸運なことでした。

昨年で監督デビュー50年になられたそうですが、これまでに撮られたどの映画を観ても、その感覚のアヴァンギャルドさ、感覚の若さには驚かされます。それはまた作品の上だけでなく、実際に現場で指揮を執られるご自身もそうなのです。

監督というのはほんとうに大変なお仕事であると思います。現場で演出されるときも瞬時に決断していかなくてはいけないことが多い。「監督、どうしますか」と聞かれて「こうしよう」と決断をくだすとき、あるいは「そこで台詞を言ってみて」と指示を出すときの、判断の素早さ、的確さ、視点のシャープさ。その指示を実現しようと走り回る、若いスタッフの熱意と熱気もすばらしい。けれど、その中の誰よりも若さに溢れてエネルギッシュでいらっしゃるのが清順さんだったりするのです。

どうしてこれほどアヴァンギャルドで瑞々しい感覚をお持ちなのだろう、とその後ろ姿を見ていつも不思議に思っております。たとえば『殺しの烙印』映画には炊きたてのご飯の匂いが好きな殺し屋が登場しますが、あの印象的なシーンはじつは電気釜のタイアップから生まれたそうです。そうしたことさえも生かし切りるのが、清順さんのすごさです。しかもそれが時代を象徴し、別の意味さえ含むものにもなっている。ご飯の匂いをかぐ殺し屋のシュールな姿から、前の戦争で白いご飯をお腹いっぱい食べたいと願う人たちが大勢いたことさえも考えさせられてしまう。楽しい中に、物事の本質を突くような深さがあるのです。

今回、改めてお話を伺う機会を得ましたが、やはり面白い語り口の中に、さりげなく深い一言が漏らされる。楽しいひとときを過ごしながら、心の居住まいを正したくなる大切なことに気づかせてくださいました。

インタビューを読む

The Salvage Project of 蒙古斑革命

2007年に他界したファッションモデル/パフォーマーの山口小夜子と写真家の高木由利子が2005年から2007年にかけて行っていたプロジェクト『蒙古斑革命』の失われていたWebサイトのサルベージを開始します。

『蒙古斑革命』は、ファッションモデルとしてかつて ”日本” のアイコンであった山口小夜子と世界を飛び廻り”人の存在”を撮り続ける高木由利子が、あらためて日本に生きる人々の美意識を探り、そのアイデンティティに向き合うべく、2人の目に留まった総勢32名の”エッジな人々”へインタビューを行ったプロジェクトです。

その様子は、 雑誌「ソトコト」で高木由利子による写真とグラフィックをメインにインタビューの抜粋を掲載し、Webサイトでインタビュー全文を公開するという形でおよそ2年間にわたり連載を行っていました。

連載が終了した2007年、山口小夜子が急逝。
そして、奇しくもそれとほぼ時を同じくし、サーバーダウンによりWebサイトの全データが消失、また、ローカルデータやインタビュー音声なども消失してしまい、『蒙古斑革命』の記録を閲覧することができなくなってしまいました。

山口小夜子急逝から10年経過した2017年、『蒙古斑革命』を当時愛読し、多くの影響を受けたという星野圭一の呼びかけに始まり、高木由利子、プロジェクト発足当時から影で支えていた現代美術家/ホーメイ歌手の山川冬樹、山口小夜子と舞・朗読・映像によるパフォーマンス活動を共にした演出家の生西康典、エンジニアの篠原敏蔵らが集まり、『蒙古斑革命』復活プロジェクトを発足。高木由利子が所蔵していたインタビューの様子を撮影した映像や誌面原稿から記録を起こし直し、新たに再構築することで『蒙古斑革命』Webサイトの復活にたどり着きました。(データサルベージ作業は、現在も続いており32名分のインタビューは順次公開していきます。)

第1回目の公開は、山口小夜子生誕の日にあたる9月19日。全32名へのインタビューを終え、連載の最後に行われた山口小夜子と高木由利子の「終わらない旅」と題された対談からスタートします。この対談は『蒙古斑革命』立ち上げの経緯やその想いを語った内容となっており、また、プロジェクトのステートメントとしても受け取ることができます。「終わらない旅」と題されているとおり、連載終了後も『蒙古斑革命』の精神が多くのひとに拡がっていくことを願った山口小夜子と高木由利子の意志を受け継ぐところからサルベージを開始します。

10年の時を経てふたたび『蒙古斑革命』が蘇ることで、山口小夜子と高木由利子の企みと想いが、現代の多くのひとと共鳴し「旅の続き」がはじまることを願っています。

2017年9月19日
「蒙古斑革命」復活プロジェクト 一同