第2章
遺跡発掘の醍醐味

山口
発掘を始めてから何年くらいになるんですか?
田中
8年くらいですね。
山口
発掘というのは、実際、どういう作業なんでしょう。掘ってるときに力あまって出土品を壊したりしないんですか?
田中
ぼくも最初は慣れなかったんですけど、「あ」と引っかかるような違和感を感じるんですよ。その感覚を習得したら、力を入れつつも、壊さない程度の力で掘ることができます。そうして最終的に土がなくなる層まで掘り進めていくんです。その場所の地層の深さにもよるんですけれど、膝くらいまで掘れば、簡単に平安時代にまで戻るところもあるんですよ。どこでも、ってわけじゃないですけど。場所場所でそういうところもあるし、2メートル掘らなくちゃいけないところもあるし。で、平安時代の層から始まって、もちろん田圃の層もあったりして、最終的に縄文の層まで行きます。土器などの遺跡が出る場所って、地層の色がちょっと違うんですけど、縄文時代あたりになると素人目には、土が腐食しすぎて何色かわからなくなってくる。みんな黒っぽく見えるので。そうなると、専門的な世界なので、地層を見る考古学の先生がそれを見分けて、掘る場所の指示を出すんです。
山口
東京都内で縄文のものを探そうと思えばあるんですね。
田中
たぶんありますね。ぼくが掘っているのは東京の西の外れですけれど、都心のほうにいくと、割と新しい時代のものが、いっぱい出るらしいです。生活レベルが現代に近づいてくると、都心のほうが出る確率が大きいので。ただ、年代が遡れば遡るほど、出にくいです。出づらくなることも確かなので。そうして地層から出るものはみんなちゃんと保管して、報告書を作るんです。こういうのが出ました、と。で、珍しいのが出ると、東京都や市の役員が来て、 このようなところでこのようなものが出るとは、と出土した物を見ながら話し合っていますね。雨になると室内で、出土品の復元作業なんかもしますよ。パズルのピースを合わせていくような感じなんですけれど。
山口
何人くらいで、一緒に作業されているんですか。
田中
実は発掘現場で男はぼく一人だけなんです。社員の方が2人いて、その方たちは男性なんですけれど指示を出す人です。実際に掘るのは女性ですね。ぼくの母親よりも年上の女性がいらっしゃいます。入った当初「経験ってどのくらいあるんですか」と訊いたら、十何年掘っている、という人たちばかりなんです。だからぼくが8年掘っているといっても、たいしたことはなくて。20年やっている70歳近くの方もいますし。まわりはみんなスペシャリストですね。扱い方も、ポイントも把握しているんです。
山口
掘り出して印象に残ったものは?
田中
驚いたのは……縄文時代の住居跡から、土器が出てきたときに「その中の土を捨てないで、ふるいにかけろ」と考古学の先生が言うんです。最初は意味がわからなかったんですが、ふるいにかけてみたら、米粒が出てきたんですよ。もう炭化してしまってるんですが、細かい灰色の粒が何十個、何百個と。それには驚きましたね。まさかお米が残っているとは思わなくって。
山口
お米が残っているんですね。
田中
もう一つ、違う意味で驚いたこともありました。入ってすぐくらいの、まだ何もよくわからなかったときのことなんですが、掘ってたら異物感を感じたので「なんだコレ」とスコップでガンガンと叩いたんです。そしたら、周りにいたみんなーーおばさんとか社員の人、考古学の先生が蜘蛛の子を散らすようにぼくの周りからパッと逃げたんですよ。何が起こったのかわからなくて呆然としていたら、遠くのほうからから「おまえ、それ危ないから触るな!」って叫んでる。きょとん、としてたら「手榴弾だ」って(笑)。よくある話らしいんですけれど、何も知らなかったからそれはびっくりしました。二日後に自衛隊の危険物を扱う人が来て、持っていたんですけど。違う意味での発掘をしてしまいました(笑)。
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田中洋介×山口小夜子