第4章
訪れる様々な人々

  • 山口

    これまで渋谷の街角で15年間占ってこられていて、最近、こういうことで悩んでいる、という相談内容の傾向や、いらっしゃる方々の傾向はありますか?

  • 鍋田

    一般的に言いますと、女性の方なら比較的、仕事の面と恋愛の面でいらっしゃるケースが多いですね。男性だと仕事はもちろん、人事の面で聞きにくるケースもあります。

    最近、目立つのは、紹介のお客様の中で精神的にまいった方が3日に1度は必ず来るようになりました。来るのがわかっていて、名前を見てさすがに一瞬、やばいな、という気がするんです。で、ふと顔をみるとだいたい合っていますから。あ、と思って、そういう方のときは一つのミスも許されない真剣勝負です。

  • 山口

    そういうのも名前に出るんですか?

  • 鍋田

    出ます。間違いなく出ます。

    30〜45分話す中で何ができるというわけではないんですけれど、ぼく自身が発する一言一言にミスがないように気が張りますね。間違った一言をふと口にして……内容は間違っていないんだけれど言葉の表現として間違ってしまって、それを悪く解釈されてしまうということがあり得る。そういった意味で、一言の重みはあるし、命取りにもなり得るんです。

    そういう方は無闇に応援してもいけないし、下手に頑張ってと言ったらたいへんなことになる。ぼくのところに来るという時点で、体調が悪いなりに良くなってきているんでしょうけれど、でもそういう治りかけの状況がいちばん危険だ、ということも理解しているので。

    だからたった一言のミスも犯さないよう、真剣勝負になってくるんです。終わった後に家に帰ってからもシミュレーションをしてみて、「どうかな」と反省してみたり。

    その翌日や2、3日もすると、紹介者であるお母さんや彼から「お世話になりました」と電話がかかってくるんです。帰ってきたら前向きに考えるようになって、親の言うことに対しても聞く耳を持つようになった、と。ぼく自身は医者ではなくたかが占い師なんだけれど、「このやり方でいいのかな」とほっとした矢先に「またよろしくお願いします」と言われると、ガーーーーン!とくる(笑)。

    カウンセリングに関しては、やはり専門的な訓練を積んだベースがないとできることではないと思うんですよ。自分なりの基準や個人的な経験、ちょっと本を読んだだけでできるレベルではないと思うんです。でも現実的にはちょこちょこいらっしゃいますからね。

  • 山口

    太古の昔、カウンセラーの役を担ったのは、シャーマンだったりしたわけでしょう。今はお医者様や専門の訓練を積んだ方の役割になってはいるけれど。人間には心の面倒を見てくれる人が必要で、現実の社会の中では、今でも実際に機能しているわけだから、やはり大事な人なんだと思います。

  • 鍋田

    そういう話を聞くと大切だな、とは思いますけれど、それに関して私が、というのはさすがに……。常に真剣にやっていますけれど、もう、ーつのミスも許されない戦闘モード入りますからね。なかなかしんどいものがありますよ。

    あと面白いほうだと、たまに占い師が来るんですよ。

  • 山口

    同業者がいらっしゃるんですか。

  • 鍋田

    「姓名判断やっています」「ネットで占いの仕事をしています」と言うんですよ。「いやぁ、姓名判断と書いてあるんだけれど、どんなものかなあ、と思って」と言うので、占い師が占い師に聞いてどうするんだよ、と思うんですけれど(笑)。まぁいいや、と思って見てみると、勉強してきただけのせいか、自分より重い人がくると、パンパンになってしまうらしいんですね。

  • 山口

    なるほど。

  • 鍋田

    だから占い師をやっているという割には、「占い師です!」と明るくではなく、「占い師を……やっているんですけど……」と、どんよりしている。自分が根暗なのに「おまえ暗いよ、重い重い、もう寄るな。そういう重くて暗い空気を出すからダメ。もう、その存在だけで人に暗い空気を出すから」と言っちゃうんです。

  • 山口

    でも元気づけてしまう(笑)。言葉に気をつけているとおっしゃっていましたけれど、言葉ってほんとうに難しいですね。5人に言ったら5通りに違う解釈をされることもあるし。伝わっていくうちに伝言ゲームのように内容が変わっていくこともあるし。具体的にはどういうふうに気をつけられているんでしょうか。

  • 鍋田

    そうだなあ……ぼく自身は嘘を言う気はまったくありません。キレイごとを言っても仕方ありませんし。だからと言って、ストレートで言っていいことと悪いことがありますし、その方を言葉で不幸にしてもいけないので、一応、言葉尻は選んでいます。だからその人が理解しやすいような言葉で言っているつもりではいます。

    でも、あまりじっくり考えて喋るタイプではなく、どんどん喋っていくタイプなので、どうしても自分本来の言葉が出てくるんですよね。…ちょっと勘に頼っているところはあります。その人に何か気づくものがあって、極力これを言ったらいけない、という本筋はありますけれども、その場その場で臨機応変にやっているのが現実ですね。

  • 山口

    その勘というのが才能なのかもしれませんね。

  • 鍋田

    だから名前を見たときに、本当に対応できないと思った方については、ぼく自身キレイ事は言いたくないので、丁重のお断りをしてお帰りいただくこともあります。

  • 山口

    断ることもあるのですか。

  • 鍋田

    結構あるんですよ。名前を見てみたら、仕事がうまくいかなくてクビになる要素はあるし、離婚の要素は出ているし、家庭運も子供との緑が悪いのも、あり得ないほど一度にバッと出ているようなケースが。もう、フォローのしようがないから、そういう場合は、ごめんなさい、申し訳ないけれど今日は読み切れないから、とお断りするんです。

    ただ、そういうフォローのしようがない人ってたいがい、大変な目に会っているんだけれど、結局は自分のことがまったくわかっていなかったりするんです。大変な思いをしているのは事実なんですけれど、まず自分がない、何をしたいのかわからない、周りの人からの印象と自分で思っている像がまったく正反対であったり。だからぼく自身の話を聞いたとしても、受け止めることもできないだろうし、ただその人の話を聞いてあげることしかできないんだけれど。

    でもそういう方に限って、答えを欲しがるんです。面倒くさいことは嫌だから、早く幸せになる答えだけをちょうだい、と。不幸になりたくない、彼氏は欲しい、幸せになりたい、お金持ちになりたい、でも努力はしたくない、面倒くさいことは嫌だ、辛いことはしたくない、てっとり早い答えをちょうだい、ということなんです。

    だから「そうじゃないんだよ」と言っても理解してもらいにくいので、そういう方に関しては丁重にお願いしてお帰りいただくんです。